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全アニメオタクに読んでほしい『ハケンアニメ!』/辻村深月【レビュー】

 

今回は、辻村深月「ハケンアニメ!」をレビューしていきます。

アニメ制作の現場を深く掘り下げて描くこの作品。

プロデューサーや監督など、それぞれの仕事にかける思いが伝わってくる物語となっています。

いつものように、なるべくネタバレなしで解説していきます。

あらすじ

1クールごとに組む相手を変え、新タイトルに挑むアニメ制作の現場は、新たな季節を迎えた。伝説の天才アニメ監督・王子千晴を口説いたプロデューサー・有科香屋子は、早くも面倒を抱えている。同クールには気鋭の監督・斉藤瞳と敏腕プロデューサー・行城理が手掛ける話題作もオンエアされる。ファンの心を掴むのはどの作品か。声優、アニメーターから物語の舞台まで巻き込んで、熱いドラマが舞台裏でも繰り広げられる――。

(文庫版裏表紙より引用)

 

見どころ紹介

女性の視点から描かれるアニメ制作、狙うは「ハケンアニメ」

この作品は、プロデューサー・監督・アニメーターというアニメ制作の現場で働く人々の仕事ぶりを描いています。

文庫特別編では男性視点ですが、メインの章はすべて女性視点で描かれています。

自由奔放な監督に振り回されながらも現場を統率していくプロデューサー、声優やほかのスタッフとの関係性に悩みながら作品をまとめあげていく監督、神作画と呼ばれるほどの絵を描き作品の聖地巡礼イベントを推し進めるアニメーター。

時には悩み苦しみながらも、それぞれがアニメの完成・放映に向けて仕事を進めていく様子が克明に描かれています。

彼女達だけではなく、周りで働く人達の仕事に対する思いが随所に描かれているので、物語全体を通してアニメ制作へのこだわりが感じられる作品となっています。

タイトルにある「ハケン」とは、派遣ではなく覇権のこと。

クールごとにファンや業界から一番評価されるアニメを「覇権アニメ」と称し、制作者たちは良いアニメを作るために切磋琢磨します。

果たして、今期のハケンアニメはどの作品になるのでしょうか?



圧倒的な取材量、業界の描き込み方

普段アニメを「消費」する側の人からしてみれば、アニメを制作する現場のことはあまり触れる機会がありません。

時々テレビで特集が組まれていたり、声優がインタビューに答えていることはあるものの、具体的にどのようにしてアニメが作られるのかは、調べてみなければ分からないことがたくさんあります。

「ハケンアニメ!」では、作品の製作過程を細かく描写しているのが特徴的です。

読んでいて「リアルな現場はきっとこんな感じなんだろうな」と思えるような場面がたくさんあり、臨場感に溢れています。

作者・辻村深月は自らを門外漢とし、この作品は想像を織り込んだフィクションだとしていますが、それでもアニメ制作にかける個々の熱は、はっきりと伝わってきます。

この小説を読むことで、アニメ作りの裏側が見えてくるので、普段視聴しているアニメも見え方が変わってくるかもしれません。

 

「どうしてアニメ業界に入ったんですか?」その答えから見える仕事への想い

各章は「どうして、アニメ業界に入ったんですか」という問いと、その答えから始まります。

アニメを好きになったきっかけや仕事への思い、動き続けるモチベーションは一体どこにあるのか。

それぞれが持つアニメへの憧れや夢は、ポジションを持って務めなければならない現実の仕事とコントラストを描き、物語をより味わい深くしていると感じます。

何より、「好き」を原動力に仕事に励む人々の輝き・熱意には圧倒されますし、心の底まで痺れるようなかっこよさがあります。

ひとつのものに傾倒し、夢中になって取り組んでいる様子には、胸を打たれます。

他の作品だと「スロウハイツの神様」にも共通するような、自分の気持ちに突き動かされながら働く姿がとても印象的な作品です。

 

まとめ

今回は、舞台化もされた小説「ハケンアニメ!」をレビューしていきました。

個人的に、アニメが好きな人には是非とも読んでほしい小説です。

アニメファン・アニメオタクの必読書といっても過言ではない!

様々な立場からアニメ制作の現場を覗いているような気分になれる作品だと思います。